はじめに
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Chapter-1.4 [Story]
18になるまでは帰らない。
旅をする際に覚悟を決めた、両親とキルトの約束だ。
文字通りの長旅。必要となる拠点地を探す為、キルトは不動産を探した。
どんな安くて脆そうな家でも良い、暫くは野宿は結構だ。
一早くベッドへ潜り込み、荷車の揺れで痛めたお尻を癒したい。
地元の人なら、この地理に詳しいだろう。
そう思い、手当り次第に訊き込みを試みてみた。
が、相手は少女。誰も相手にしてくれなかった。
「お嬢ちゃんが家を買う?ママから貰ったお小遣いじゃあこれっぽっちも足りないよ?」
「家出か?俺も昔よく親に怒られていじけて家出たぜ。直ぐに家に帰ったけどよ。
大丈夫、とーちゃんもかーちゃんも許してくれるさ。」
「無理無理、冗談は他所でやってちょうだい。」
・・・想像以上に、世の中は甘くない。
キルトの話を真面目に聞いて対応してくれた人は、誰一人居なかった。
「冗談じゃないですよ。ちゃんと自分で働いて、お金いっぱい稼ぎましたもん・・・。」
一人前の人として認められずに子供扱いされたキルトは、不貞腐れて足元の小石を蹴った。
それでも、諦めずにまた別の人へと訊きに行った。
今夜眠る暖かい布団の為に。
向かおうとした途端、後ろから誰かに話しかけられた。
「君かい?不動産を探して街をうろついてる女の子ってのは。」
「え、どうして私のことを知ってるのですか?」
「此処らで相当噂になってるよ。かなりしつこく探し回ってるらしいね。」
「ひええ、そんなに知られているとは・・・。」
夢中で多くの人に訊き当たっていたキルトは、その事に全く気付かなかった。
むしろ、そんなことになる事ですらも考えてなかった。少し恥ずかしい。
キルトに話しかけたその青年は、視線を合わせるようにしゃがみ、優しい口調で話を続けた。
「もう訊き込みは止した方が良い。皆君の為に口を塞いでるんだ。
子供一人が家を買って暮らすなんて危ないよ。」
「わかってます。でも、私にはどうしても暮らしていく場所が要るのです。
旅を続ける為に、必要なんです!」
「そうかあ。じゃあ、今日一日僕の家に泊まってまた明日探すのはどう?
ずっと歩きっぱなしで疲れたでしょ。ゆっくり休むと良いよ。」
「良いのですか?」
「勿論!それに、不動産を見つけても子供一人じゃ皆みたいに相手してくれないよ。
僕と一緒だったら、OKしてくれると思うんだ。」
この状況は、キルトにとって絶好のチャンスだ。
これを利用して良い物件が上手く見つかるかもしれない。
「でも・・・とても嬉しいのですが、やっぱりお断りします。」
キルトは、そのチャンスを自ら手放した。
「はっ!?どうして?もうお家見つからないかもしれないよ?」
「自分一人で一人の人間としてちゃんとやりたいのです。
この先も、誰かに頼れるとは限らないので。」
この青年と話す前は、子供だからと言って誰一人相手にしてくれなかった。
唯一相手にしてくれた青年でさえも、キルトのことを子供扱いしている。
キルトにとってそのことが納得いかず、遣る瀬無かったのだ。
「・・・そうか、君には敵わないなあ。じゃあ一つだけ良い事を教えてあげよう。」
青年は説得を諦め、キルトに助言を告げることにした。
「ここから遠く離れた所にオルトレア地方って場所があるんだ。
そこの南部に長い間誰も住んでない屋敷がある。
僕、数か月前までは冒険者だったんだ。オルトレアに行く度にその空き屋敷を
休憩場所にしてた。ちょっと広すぎるけど、住み心地は最高だったよ。
勝手に住んでも良いだろう。相当穴場だと思うよ。」
「本当ですか?」
「そうだ!もしそこへ行くのだったら、オルトレアの地図をあげるよ。
今はもう使わないしね。丁度捨てようと思ってた所なんだ。」
そう言うと青年は、自身のジャケットのポケットから小さく折られた地図を取り出して
キルトに渡した。
地図を広げ、わぁ、と、感銘を挙げているキルトに、青年は屋敷の場所を指して教えてあげた。
「この辺り、ここから北西に行けばオルトレアだ。
無事に着くといいね、それじゃあ。」
「ご親切にありがとうございます!それでは。」
キルトは青年から貰った地図を片手に、嬉々と北西の方へ向って走って行った。
行き先は決まった。もう迷うことはない。そこへ向かうだけだ。
「生意気な餓鬼だったな。あの幽霊屋敷で音を上げれば良いさ。」
青年は呟いて去った。
旅をする際に覚悟を決めた、両親とキルトの約束だ。
文字通りの長旅。必要となる拠点地を探す為、キルトは不動産を探した。
どんな安くて脆そうな家でも良い、暫くは野宿は結構だ。
一早くベッドへ潜り込み、荷車の揺れで痛めたお尻を癒したい。
地元の人なら、この地理に詳しいだろう。
そう思い、手当り次第に訊き込みを試みてみた。
が、相手は少女。誰も相手にしてくれなかった。
「お嬢ちゃんが家を買う?ママから貰ったお小遣いじゃあこれっぽっちも足りないよ?」
「家出か?俺も昔よく親に怒られていじけて家出たぜ。直ぐに家に帰ったけどよ。
大丈夫、とーちゃんもかーちゃんも許してくれるさ。」
「無理無理、冗談は他所でやってちょうだい。」
・・・想像以上に、世の中は甘くない。
キルトの話を真面目に聞いて対応してくれた人は、誰一人居なかった。
「冗談じゃないですよ。ちゃんと自分で働いて、お金いっぱい稼ぎましたもん・・・。」
一人前の人として認められずに子供扱いされたキルトは、不貞腐れて足元の小石を蹴った。
それでも、諦めずにまた別の人へと訊きに行った。
今夜眠る暖かい布団の為に。
向かおうとした途端、後ろから誰かに話しかけられた。
「君かい?不動産を探して街をうろついてる女の子ってのは。」
「え、どうして私のことを知ってるのですか?」
「此処らで相当噂になってるよ。かなりしつこく探し回ってるらしいね。」
「ひええ、そんなに知られているとは・・・。」
夢中で多くの人に訊き当たっていたキルトは、その事に全く気付かなかった。
むしろ、そんなことになる事ですらも考えてなかった。少し恥ずかしい。
キルトに話しかけたその青年は、視線を合わせるようにしゃがみ、優しい口調で話を続けた。
「もう訊き込みは止した方が良い。皆君の為に口を塞いでるんだ。
子供一人が家を買って暮らすなんて危ないよ。」
「わかってます。でも、私にはどうしても暮らしていく場所が要るのです。
旅を続ける為に、必要なんです!」
「そうかあ。じゃあ、今日一日僕の家に泊まってまた明日探すのはどう?
ずっと歩きっぱなしで疲れたでしょ。ゆっくり休むと良いよ。」
「良いのですか?」
「勿論!それに、不動産を見つけても子供一人じゃ皆みたいに相手してくれないよ。
僕と一緒だったら、OKしてくれると思うんだ。」
この状況は、キルトにとって絶好のチャンスだ。
これを利用して良い物件が上手く見つかるかもしれない。
「でも・・・とても嬉しいのですが、やっぱりお断りします。」
キルトは、そのチャンスを自ら手放した。
「はっ!?どうして?もうお家見つからないかもしれないよ?」
「自分一人で一人の人間としてちゃんとやりたいのです。
この先も、誰かに頼れるとは限らないので。」
この青年と話す前は、子供だからと言って誰一人相手にしてくれなかった。
唯一相手にしてくれた青年でさえも、キルトのことを子供扱いしている。
キルトにとってそのことが納得いかず、遣る瀬無かったのだ。
「・・・そうか、君には敵わないなあ。じゃあ一つだけ良い事を教えてあげよう。」
青年は説得を諦め、キルトに助言を告げることにした。
「ここから遠く離れた所にオルトレア地方って場所があるんだ。
そこの南部に長い間誰も住んでない屋敷がある。
僕、数か月前までは冒険者だったんだ。オルトレアに行く度にその空き屋敷を
休憩場所にしてた。ちょっと広すぎるけど、住み心地は最高だったよ。
勝手に住んでも良いだろう。相当穴場だと思うよ。」
「本当ですか?」
「そうだ!もしそこへ行くのだったら、オルトレアの地図をあげるよ。
今はもう使わないしね。丁度捨てようと思ってた所なんだ。」
そう言うと青年は、自身のジャケットのポケットから小さく折られた地図を取り出して
キルトに渡した。
地図を広げ、わぁ、と、感銘を挙げているキルトに、青年は屋敷の場所を指して教えてあげた。
「この辺り、ここから北西に行けばオルトレアだ。
無事に着くといいね、それじゃあ。」
「ご親切にありがとうございます!それでは。」
キルトは青年から貰った地図を片手に、嬉々と北西の方へ向って走って行った。
行き先は決まった。もう迷うことはない。そこへ向かうだけだ。
「生意気な餓鬼だったな。あの幽霊屋敷で音を上げれば良いさ。」
青年は呟いて去った。
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